最近よく「あんこにこだわってるんですね」と言っていただく。

これは、ありがたくもあり、嬉しいことでもある。

ただ、「あんこ」にこだわっているのはうちだけでなく、餡を使う和菓子屋なら、どの店でも餡にはこだわっていると思うので、取材していただくと、嬉しい反面とてもおこがましい気持ちにもなる・・・。


たまに、他の和菓子屋さんで、「このお菓子美味いなぁ」と思うお菓子に遭遇すると焦りにも似た感情になる。
「ヤバい!美味い!!」と思うと、自分も何か考えねば…と漠然とした不安に襲われる。
職人であれば少なからずそういう感情になる時があるのでは。
その繰り返しでいろいろ試作し、新商品が出来る。

だから、作っている過程では、「こだわり」云々というよりは焦燥感に駆られて・・・というのが正直なところかもしれない。


ただ自分で「こんなのを作ってみよう」と積極的に作る時は、それまでの蓄積していたもののおかげで意外にいいものが作れることが多い。
そうすると嬉しくてまた頑張ろうと思う。その繰り返しで日々仕事している。

・・・よく分からなくなってきたけれど、
焦燥感にかられ試行錯誤し、たまに作りたいものが出来あがる。
褒められると嬉しくなり、モチベーションが上がる。そしてまた、新しいものを作る。の繰り返しで、「これがうちのこだわりだから」と頑なに変えないものは一つもなく、常にいいことは取り入れる。

だから「こだわりはなんですか?」といわれると一番困る。
いいものがあれば、まずはやってみて、良ければ変えていくのがこだわり…と、一人思う。

固執せず、常に新しい良いものを取り入れていくことが、結果「こだわり」になるのかもしれない。


本当に職人のひとり言(^_^;)


rakra
「ra kra(ラ・クラ)」 3.4月号の特集「アン・あん・餡」に掲載されました。